Mare of Easttown (2021)

www.imdb.com評判の高いMare of Easttownを見た。アメリカの地方都市の陰鬱な事件が題材になっていて、最初の方は見ているとつらいのだが、引き込まれてみた。連続視聴で一気見することはできなかった。途中で休みを入れて見た。クライム・ドラマとしてはほんとうによくできている。ハードボイルド風に見えるが、ハードボイルドではない。斜に構えていないし、日常の苦難を正面から受けとめる人たちの物語になっている。ドラマの進行とともに、この物語は女たちの物語であることがわかってくる。ハリウッド式のドンパチ暴力とセックスは苦手で、話題作を宣伝されるほど退いてしまうのだが、こういうアメリカであれば、物語として何とか受けとめられる。

続編を望む声もあるようだが、つくらない方がよい。アメリカのTVドラマは続編で長々とやるとだいたい自滅するからだ。5~7シーズン続くような、いわゆるヒット作は、だいたい第2~第3シーズンあたりがピークで、あとは惰性になる。ERは第1シーズンだけで十分だし、エレメンタリーもこれほど長く続ける必要があるのかしらと思ったのを思い出す。最近「メンタリスト」をずっと見たけれども、やはり第2~第3シーズンで十分だったのではないかと思った。主人公の幸せを結婚と規定する感じもおかしなものだ・・と思って、最後の方が飛ばし見をした。

2021年10月期のドラマ「最愛」は秀作だった。平均視聴率は一桁だったようだが、ともかくサスペンス・ミステリの部分がきちんと作られていたので感心した。ネットメディアは恋愛要素を強調するものの、クライム・ドラマとかミステリ、サスペンスの類いは物語の骨格にロジックがないと、視聴者はあっというまに離れていく。テレビの製作者たちは、ミステリの土台を軽視する人が多く、それででたらめの作品が次々現れ、ドラマから視聴者が離れていくという悪循環になる。同じチームの「Nのために」「リバース」も配信サイト(有料)で一通り見た。製作陣がまじめにつくっていて、ちゃんと積み上げがある。それから「アンナチュラル」「MIU404」も感心した。

「QUIZ」(TBS、2000)「空から降る一億の星」(フジ、2002)のあたりで、テレビのミステリドラマは見ない方がよいと判断したのを思い出す。こんなのではね、と。視聴率ほしさの、あまりにもいい加減なつくりで、ドラマそのものを見る習慣がその頃からなくなってしまった。今後もこの水準に戻るようならば、見限るしかないのかも知れない。「最愛」をきっかけに、またテレビのミステリ、サスペンスを見ておこうという気持ちになる。

面白いと思ったのは「眠れる森」(フジ、1998)。ふだんドラマをほとんど見ない知り合いが「面白いんだよ」というので、レンタルビデオ(時代を感じるけれども)で一通り見たことを思い出す。確かにドラマを見ない友人が惹きつけられるのはよくわかった。

2時間ドラマはゆるゆるでできていることが多い。本気では見ないし、流し見るだけで、酷い作品でも腹をたてたことがない。「相棒」は玉石混合。最近のシリーズはいくつかエピソードを見たけれど「これはもう十分」という判断をした。テレビ朝日は80年代90年代あたりからちょっとずつ見ていたが、ドラマづくりが下手な放送局である。ここの局の連ドラは数字が出ないと急激に質が下がるのが特徴で、スタッフがやる気をなくすのかも知れない。手抜きになることが視聴者に丸見えになるドラマづくりをする。だからこの局のドラマは最初から信用していない。

テレビの時代が終わりかけているときに、秀作が出てくるのは皮肉といえば皮肉である。テレビの全盛期に物語世界にひたりたい視聴者を軽く見て手抜きで済ませたツケは大きいのではなかろうか。とりかえしはつかないだろう。ネット配信の時代に移行することは確実で、Mare of Easttownはその最初の波のなかの秀作ということになる。