「100万回言えばよかった」の感想

TBS「100万回言えばよかった」全10話を見終わる。これはnetflixでも配信されている。

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今期のドラマで最後まで見たのはこれだけだった。

ドラマの放送日とドラマ内の時系列がほぼ一致するかたちで進むので、最後に何かどんでん返しのような仕掛けがあるのかと思っていたが、話しをひっくり返すための仕掛けはなく、むしろ現世で恋人となった若い2人のあいだの最後の別れの切実さを表現するための方法だったようだ。最後に井上真央が夜明けの浜辺を1人で歩いて行く姿は美しいラストシーンになっている。

ロングセラーの絵本『100万回生きたねこ』(佐野洋子)をドラマのモチーフにしている。第10話に松山ケンイチ演じる刑事がこの絵本を眺めるシーンがあって、アディショナルタイムを過ごすためにこの世に戻ってきた恋人と思い出の地へ出かけようとする女性に、帰ってきてほしいと語りかける。物語の前振りのかたちでたびたびこの絵本への言及があり、(ここで回収するのか・・、見事だな)という感想。メイン3人の関係性の積み重ねと絵本のメッセージが交わって心地よいし、ちょっと泣ける。

 

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ミステリ的な部分は第9話まででほぼ「解決」を与えてしまい、第10話は井上真央佐藤健松山ケンイチの3人の不思議な関係の終点を描くことに集中した。佐藤健の役の男性が殺された理由・犯人は、配役(キャスティング)から予想できる範囲だったが、退屈したり、嫌にならずに見続けたのは、メインの3人のやりとりが面白かったからである。これにシム・ウンギョン演じる研修医が係わり、狂言回し的に幽霊となった人たちが係わる。シム・ウンギョンは映画『サニー 永遠の仲間たち』『新聞記者』で見てきた俳優さん。

このドラマ、秀作というべきか、非常によくできている。ハッタリがなく、地味な作品ということになるのかも知れないが、見終わって満足している。