未解決事件

年末の「未解決事件」を見る。

www.nhk.or.jp松本清張帝銀事件

 第1部 ドラマ『松本清張と「小説 帝銀事件」』  

2022年12月29日(木)午後9時00分~午後10時29分 総合テレビ

第2部 ドキュメンタリー「74年目の“真相”」  

2022年12月30日(金)午後9時00分~午後9時59分 総合テレビ

 

多くは様々な文献ですでに知られていることと思われる。

アメリカ政府の資料・関係者インタビュー、警察の捜査資料、検察の資料を映像を含めて引き出した部分は新しいのかも知れない。

 

731部隊GHQの取引については以前から言われていた。ウィリアム・トリプレット『帝銀事件の真実―平沢は真犯人か?』(講談社)は1987年刊である。森村誠一悪魔の飽食』(カッパノベルス)は1981年刊、森村氏のこの本は当時大ベストセラーになった。

NHKがなぜいまこの時期に731部隊の件をとりあげたのかわからない。安倍政権以降、言論の自由がなくなっている状況が続くが、松本清張の名前に依存しつつ、日本の戦争犯罪に迫る内容であった。政権政党による言論統制にメディアが翼賛する状況のなかで、ある種のガス抜きとして例外的にこうしたドキュメントの放映が認められて、形式的に言論の自由が保証されているように見せかけるためだったのかも知れない。

憲兵Aの存在が捜査のなかで浮上し、平澤貞通にターゲットが転換していく部分は、映像でよくわかるように見せていた。

見ていれば、平澤氏は犯人ではなかった、ということであろう。戦争犯罪が隠蔽される際GHQの力があったという物語は、日本の軍国主義を牽引した支配層の罪状も相対化すると考える人もいるだろうから、NHK的にも都合がよかったのかも知れない。

昔のNHKであれば、戦後の事件などについて、新聞を引用・言及するときは朝日新聞が多かったが、最近はそうではないようである。NHKが朝日を敵視する勢力と組んだ証と見ているが、一見戦争犯罪に迫るような番組の体裁だが、現行の権力に、諸種の寸法を合わせてつくられている番組であったことが何となく感じられてくる。あまり佳い感じはしない。

NHKの権力の都合に合わせた報道姿勢を見ているうちに、NHKの報道情報番組を信用しなくなった。ニュースのなかで一般の人がインタビューされているのを見ると、人選は意図的なのではないか、もしかすると政権党に近い団体の人たちが一定数混じっているのではないか・・などと連想してしまう。家族や子どもがインタビューされている場合も同じである。言い換えると、ここ数年で驚くほどNHKのニュースをほとんど見なくなっている。受信料はとられているので、与党のプロパガンダにお金を払っているようなものかも知れない。

そういう目で今回の番組を見ていた。番組によれば、毒を飲まされて苦しむ人々に犯人は動じなかったらしい。やはりそういう光景を初めて見たら、毒の知識があっても、毒の効果に動揺するはずだ。もしこちらの推論が正しければ、動じなかったということは、何度も同種の光景を見たことがある人なのではあるまいか。そんな想像をした。

支配層、戦争犯罪の支配層は戦後ものうのうと生きた。これを見た後、罪を贖わなかった人は死後どうなるのだろう・・とういう想像もしていた。