ラブシャッフル

TBS「ラブシャッフル」(2009年、全10回)。某有料配信サイトで見る。2022年の、この国の沈滞を思うと、ドラマそのものに元気があると感じてしまう。日本がアベ政治でおかしくなってしまう前のテレビドラマは何だか活気がある。毎回アース・ウィンド&ファイアーの「宇宙のファンタジー(Fantasy)」のエンディングで、ごまかされているのかも知れない。エンディングはNG集になっていたのを今回見るまですっかり忘れていた。富裕層の若い人たちの恋愛、恋人交換の話しで、話し自体はめちゃくちゃなことをしているのだが、バブル崩壊の前から続いてきた「トレンディドラマ」の名残りが味わえる。野島伸司脚本。

玉木宏さんは何だか若い。でも単なるイケメン俳優ではないことも分かる。漫画的な演出で、悪ふざけシーンが入るものの、やはり上手いのである。香里奈さんの売り出し中の作品でもあった。貫地谷しほりさんは「ちりとてちん」の後、余裕の存在感。吉高由里子さんも出ていて、彼女はこのあたりから売れっ子の俳優になっていく。2013年の「ガリレオ」「花子とアン」へ向かう時代、(ああ、こんな役もやっていたのか・・)という感じ。

高層マンションの最上階の4人の住人、IT企業課長、精神科医、同時通訳者、写真家。

このドラマをいまリメイクしたら、どうなるのだろうか。この国の経済衰退はハッキリしているので、おそらく、こういうノリで製作することはできないだろう。トレンディドラマの名残りがあるこうしたドラマを見ると、2009年に比べて2022年の方が圧倒的に時代が悪くなっていることがわかるのである。2022年の方が冷めている。

今後この国では20代~30代の男女を主人公にして、ハチャメチャな設定で、それらしく男女の恋愛を描くことは難しいだろう。そんな気がした。これからのこの国での生活が良くなっていくとは到底思えないからである。視聴者の側が生活に疲れてしまっているからだ。

「持続可能な恋ですか?~父と娘の結婚行進曲~」(2022年、TBS)をTVerで見るのだが、ときめかない。配役は申し分ないし、俳優さんも良いのだが、おそらく、上野樹里さんと田中圭さんが演じる2人の男女の恋愛に、何かドキドキ感みたいなものがない。よくわからない。描かれた人物はみんな好人物、しかし、主軸の2人の恋愛がいまひとつピンと来ない。淡々と見るだけになる。何というのか、どうしてもこの2人でなくては・・というものがないし、2人の行く末を見ておきたいという気分にもなりにくい。

「元彼の遺言状」(2022年、フジテレビ)。不機嫌な綾瀬はるかさんを毎週見るのはしんどいが、ストーリーラインは面白い。ただ牧師の話しだけは、キリスト教を知る人は、これは違う・・という内容。原作がどうなっているかわからないのだが、もう少しちゃんと設定を確認(考証)しておいた方がよいだろうと思う。大泉洋さんは大河の頼朝が残酷な権力者になって無理筋を押し通しているので、こちらを見て視聴者として「中和」している感じ。

深夜帯の「探偵が早すぎる 春のトリック返し祭り」(2022年、読売テレビ)は、これはこれで仕方ないという感じ。一応見ているが、ファーストシーズンやスペシャルドラマはとくに遡らなくてもよいだろうと判断した。主要登場人物を演じる俳優3人の怪演を見るほかない。話しの内容は、悪巧みする兄弟姉妹を退治した時点で一応区切りはついている。

00年代のドラマを配信で見ると、2012年末から続くこの国の劣化を改めて感じる。時代は確実に悪い方に傾いている。「ラブシャッフル」の富裕層の青年たちを見て、2009年のリアルタイム視聴であるならば、地続きの世界と感じることができたが、2022年ではもう戻れない世界の話し、ファンタジーである。