解除

緊急事態宣言解除のニュースが伝えられているが、コロナ禍終息のきざしはない。今年も新型コロナ対応の日々が続くだろう。自民公明政権の無責任な態度を見ていると軍部のテロとクーデターで政党政治が崩壊する戦前を連想するけれども、世論はまだ内閣を支持し自民公明政権を過大に評価し続けるようだ。自民公明の無責任政治を支えるマスコミ政治部・マスコミ幹部たち。自ら苦境を招く選択をなぜしているのかわからない。

マスコミの権力への忖度が続き、きちんと報道されないが、日本の経済衰退が着々と進む。基幹産業の空洞化、外資による買収で、かつての経済大国はあとかたもない。情報番組でアイリスオーヤマが特集されるのを見て、それはそれでよいのだけれども、家電の大企業が衰退した事実がこういうかたちで浮き彫りになるのは残念である。池上彰氏の番組で中国資本の世界制覇、日本企業が「ベスト~」のランキングに出てこなくなっている事実を淡々と紹介していたが、自民公明政権の国粋主義プロパガンダに酔わされているうちに政治経済、民主主義が沈められて、一部の富裕層の優遇と権威主義の横行で戦前・戦中のような独善へ陥ろうとしている。改憲して戦争国家にすれば何とかなるという幻想で再びこの国は失敗するような気がしている。若い人たち、これからうまれてくる人たちに戦後民主主義を享受させない体制を着々と固めている。ということは、民衆は暗黙知と直観で少子化という選択をしているということかも知れない。若い人もこれからうまれてくる人も自民公明政治と憲法を守らない政治が続く限り、個人として幸せに生活する道はこの国では最初から断たれているからである。子どもたちを不幸にしない方法は子どもを生まず、自分たちの世代で終わりにして、この国から退出することだからだ。将来の市民を救う方法はそれくらいしかない。民主主義の希望がない国で善い人生を送ることは無理だろう。市民に発言させない国をつくれば、退出を選択する。退出は東側から西側へというわかりやすいかたちをとることもあるが、発言を体よく制限する国では、見えない退出オプションを使う。人々は無意識のうちに、未来に期待せず、次の世代を可能な限り少なくして苦しみを負う人々を総体として減らし、権力の横暴にそっと異議申し立てをしているのである。逆にだからこそ自民公明を支持して大丈夫という判断になるのかも知れない。自分たちの世代で終わるからである。

少子化は未来のこの国に対する投票で、いまの自民公明政治に対する批判という風にとらえた方がよい。幸せになる見込みがない国で、次の世代を希望を持って育てることはできないからだ。自民公明の戦前イデオロギーの称揚が放置されるのも、少子化というかたちで異議申し立てに見えない異議申し立てが表明されているのも、いまここで対立なく摩擦なく過ごすための人々の知恵である。世襲政治家の歪んだイデオロギーにつきあいたくないと言っている民衆の真の声はこの国では届かない。民衆はそれがわかっているので、自分たちの世代で終わりにしてよい・・という方向へ集合的な無意識は動いている。

想像であるが、ほしいままにわが世の春を享受する権力を黙って見ている民衆が何も考えていないわけではない・・と思うのである。人々には無意識の選択があり、この国の人口構成を先細りにするくらい静かな絶望が広がっているのだろう。希望が持てる国にするには、北欧型の高度福祉社会へ移行するという選択ではあるまいかと思うが、これについてはいつか感想を書いてみたい。